骨の状態を知ることが出来るハンスフィールド値とは? - インプラントなら茨城県古河市の嶋野歯科医院

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骨の状態を知ることが出来るハンスフィールド値とは?


CTは、現在の医療には欠かすことのできない画像診断機器として、外傷から腫瘍まで様々な医療現場に用いられています。もちろん、歯科医療も例外ではありません。
そんなCTに関わる用語のひとつにハンスフィールド値があり、CTを扱う医療関係者には、大変重要な言葉です。
一般的にはなかなか耳にする機会のない用語ですが、今回はハンスフィールド値について紹介します。

CT値について

ハンスフィールド値を解説するためには、まずCT値という言葉から説明しなければなりません。

CT値って何?

CT画像をご覧になった方もいらっしゃることでしょう。
通常CT画像は、白と黒のモノクロ画像で表現されています。
基本ともいえる二次元画像のCTから、3D-CTとよばれる三次元画像を構築するCT、そして臓器の動きを観察できる最新の4D-CTともよばれる四次元CTまで、中には色付けしてみやすくしたものもありますが、CTは基本的に全てモノクロ画像です。
このCT画像上に現れる白と黒のコントラストの差、つまり濃淡の差をCT値と呼んでいます。

白と黒のコントラストの幅

人の体は、その大部分が水分でできています。
そこで、CT値は水をゼロ、空気を-1000として表現するように決められています。
この条件のもとで、水に対する密度の相対値としてCT値は、表されます。
もし、撮影した組織の密度が水よりも高いものならCT値の数値は大きくなり、密度が低いと反対にCT値は0より小さくなります。
なお、CT値が狂ってしまうと正確な描出ができなくなるので、定期的に何も載っていない状態でCTを撮影し、空気のCT値が-1000になるように設定しています。

CT値の利用法

CT値が高いものはより白く、CT値の低いものはより黒くなります。
具体的には、骨や歯は非常に密度が高いので、白くはっきりと映し出されます。内蔵や筋肉は灰色、空気は黒色で表されます。
つまり、CT画像は、CT値の分布を元にして表現されているわけです。
ですから、CT画像は白と黒のモノクロ画像なのです。

ハンスフィールドとは

ハンスフィールド値という言葉に出てくるハンスフィールドとは、一体何なのでしょうか?

CTの発明者の名前

CTは、イギリスのゴッドフリー・ハンスフィールド博士によって発明されました。
つまり、ハンスフィールドは、CTの発明者の名前なんですね。
ハンスフィールド博士がCTを発明するまでにも、X線装置を回転させることで物質の断面を撮影する、つまり断層撮影法は開発されていました。ところが、これらはすべてアナログでした。
CTは、断層撮影にコンピューターによる制御と画像処理を組み合わせた点が非常に画期的で、ハンスフィールド博士はこの功績によって1979年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

CTとビートルズ

余談ですが、ハンスフィールド博士はEMIというレコード会社に勤めており、そこでCTを研究していました。
その研究資金は、EMIに所属していたビートルズのレコードの売上げだったとも言われており、CTはビートルズの最大の遺産ともいわれています。

ハンスフィールド値とは?

ようやくですが、本題であるハンスフィールド値について解説します。

ハンスフィールド値ってなに?

ハンスフィールド値とは、CT値の単位です。
電力の単位であるワット[W]や、抵抗値の単位オーム[Ω]など、発見者など貢献した人の名前にちなんだ単位名が命名された例はたくさんあります。CT値も同じで、CTを発明したハンスフィールド博士にちなんで命名されました。

ハンスフィールド値の単位

ハンスフィールド値の単位は、[HU]と表記されます。
これは、ハンスフィールド値の英語表記である”Hounsfield Unit”に由来しています。

ハンスフィールド値の歯科医療への応用

ハンスフィールド値の歯科医療への応用例としては、インプラント治療があげられます。
インプラント治療では、インプラントを埋め込みたいところの骨の状態が、インプラント治療の成否に重要な鍵となっています。

今までの骨の状態の評価法

骨の状態の評価法としては、『レックホルムとザルブの分類』という診断法があり、骨の状態を4段階に分けて評価しています。
骨の密度がどの段階になっているのかどうかは、執刀医の指先の感覚に頼って判断することが多く、客観性に乏しいのが実情です。
これは、一般的なレントゲン写真で、『レックホルムとザルブの分類』に基づいて、骨の状態を4段階に分けて評価するのはたいへん難しいからです。

ハンスフィールド値による骨の状態の評価法

レントゲン写真で、骨の状態を評価するのは困難です。
そこで、客観的に骨の状態を診断するためにハンスフィールド値を応用することが、アメリカのカール・ミスチによって考案されました。
ミスチの分類では、骨の状態をハンスフィールド値によってD1からD5までの5段階で評価します。
これによって、客観的にインプラント治療の術前検査が行なえるようになりました。

まとめ

ハンスフィールド値は、CT値の単位です。
CT画像は、CT値の分布を図に示したものともいえ、CT画像を作り上げる上でハンスフィールド値の果たす役割は大変重要です。
病気や外傷の治療では、CT画像を元に診断を下しますが、ハンスフィールド値に注意を払うことはあまり多くありません。
しかし、ハンスフィールド値という生のデータを使えば、骨の状態を判断することができます。この特徴を生かせば、インプラント治療での骨の状態の診断が客観的に行なえるようになりますので、インプラント治療の成功率が今後高まっていくことでしょう。