こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。

インプラントを骨に埋入したとき、最初にインプラントに触れるのは骨ではありません。血液です。

この最初の段階で、インプラントの表面に何が起こるか。そこに着目して生まれたのが親水性インプラントです。聞き慣れない言葉だと思いますが、骨とくっつき始める最初の段階を左右する技術として、ここ20年ほどで大きく進歩しました。

表面が血液になじむかどうか

インプラントの材料は、純チタンやチタン合金です。通常のチタン表面は、時間がたつと空気中の成分が付着して、水や血液を少しはじきやすくなります。

親水性インプラントでは、表面に特殊な処理を施して、水や血液になじみやすい状態を保っています。ここが通常のインプラントとの違いです。埋入した瞬間に血液が表面へ素早く均一に広がるので、骨をつくる細胞や治癒に必要な成分が集まりやすくなります。その結果として期待されているのが、骨とのスムーズな結合です。

早く安定しやすいことの意味

インプラントは埋入したあと、一時的に安定性が下がる時期があります。最初は骨にしっかり食い込む力で固定されていますが、骨が作り替わる途中で、その力がいったん弱まるからです。親水性の表面では、この落ち込みが比較的小さいことが報告されています。

この差が特に効いてくるのが、抜歯したその日にインプラントを入れる抜歯即時インプラントや、早い段階で仮歯を装着する即時荷重です。どちらも、最初の骨との結合がうまくいくかどうかで結果が大きく変わります。骨が柔らかい上顎や、骨の量が少ない症例でも、初期の治癒を助けてくれる可能性があります。

当院で使っている2つの親水性インプラント

当院で採用しているのは、ストローマンのSLActive®と、ノーベルバイオケアのTiUltra®の2種類です。

SLActive®は2005年に登場した親水性インプラントで、世界で最も多くの臨床実績を持つ製品です。長期の治療成績や研究データが豊富に積み重なっている点に、私は信頼を置いています。

TiUltra®はより新しい世代の表面で、骨の中に入る部分と歯ぐきに近い部分とで、表面の性状を変えています。それぞれの組織に合った環境を作るための設計です。

どちらのメーカーも国内での部品の供給体制が安定していて、将来の修理やメンテナンスにも対応しやすい。インプラントは何十年も使うものなので、ここは表面の技術と同じくらい重視しています。

親水性だけで結果が決まるわけではありません

誤解のないようにお伝えしておくと、親水性インプラントは治りを助ける技術の一つです。これを使えば必ずうまくいく、というものではありません。

骨の状態の正確な診断、治療計画、手術の精度、噛み合わせの設計、術後のメンテナンス。どれか一つでも欠ければ、表面がどれほど優れていても結果は損なわれます。私の持論は「臨床は全科目の掛け算」で、インプラントの表面処理もその掛け算の一項目です。X-Guide®によるナビゲーション手術や精密な補綴と組み合わせて、はじめて本来の力を発揮できると考えています。