こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。
以前、あるレストランで面白い経験をしました。同じレシピ、同じ食材、同じ厨房で、シェフとスーシェフがそれぞれ同じ料理を作り、それを食べ比べさせてもらう機会がありました。
正直なところ、ほとんど同じ味だろうと思っていました。ところが、驚くほど違いました。
レシピに書けない部分がある
火入れの加減、香りの立ち方、ソースのまとまり、食感。どちらもおいしいのですが、シェフの皿には、一口目で分かる完成度がありました。
レシピが同じなら、違いはレシピに書かれていない部分にしかありません。食材の状態を見て火力を変える判断、香りがいちばん立つ瞬間を知っている経験、水分量を目で見極める感覚、塩を入れる数秒のタイミング、盛り付け直前の微調整。どれも数字にできず、本を読んでも身に付かないものです。
本物を知らなければ、比べられない
今は本やYouTube、SNSに、数え切れないほどのレシピがあります。良いレシピもたくさんありますが、私はいつも一つ気になります。そのレシピは、本当にあの店の味を再現できているのか。
料理を趣味にしていると、それを確かめたくなります。だから気になる料理は、できるだけ実際のお店に食べに行くようにしています。本物を知らなければ、自分の料理がどこまで近づけているのか、どこを直せばいいのかを判断する基準がないからです。好みは人それぞれでも、その店が目指した味には必ず意図があります。まずそれを知ることが、腕を上げる第一歩だと思っています。
インプラントも、同じ道具で結果が変わる
あの食べ比べのあと、インプラント治療もまったく同じだと思いました。
CT、シミュレーション、ガイド、インプラントのメーカー。道具がすべて同じでも、術者が違えば結果は変わります。術中に骨質をどう判断するか。ドリルの抵抗をどう感じ取るか。どこまで骨を削り、どこを残すか。歯ぐきをどれだけ丁寧に扱うか。縫合の張りをどう加減するか。予定外のことが起きたとき、その場で最善の判断ができるか。マニュアルには書けない、経験でしか身に付かない感覚です。
だから私は、歯科でも本物に触れることを大切にしています。優れた先生の治療を見て学び、自分の治療を客観的に見直す。学会や研修に足を運び続けているのは、そのためです。
シェフの料理を食べに行くように
当院では、インプラントの手術をすべて私が担当しています。理由は以前の記事で書きましたが、ほかの先生にできないという意味ではありません。患者さまに提供する治療の質を、常に一定以上に保ちたいからです。
一流のレストランにお客さまが足を運ぶのは、レシピではなく、そのシェフの経験と技術に価値があるからです。インプラントも、設計図だけでは完成しません。本物を知り、それを再現できる技術を磨き続けることが、10年後、20年後の患者さまの噛み心地につながると考えています。
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