こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。
インプラントの手術前、当院では骨の状態だけでなく、食生活や体重の変化、ダイエットをしているかどうかも伺っています。歯医者でなぜ食事の話を、と思われるかもしれません。
理由は単純で、インプラントを最後に支えるのは、患者さまご自身の骨と歯ぐきだからです。
インプラントは患者様の「治る力」に頼る治療です
インプラント治療は、チタンを骨に埋めて終わりではありません。手術のあと、骨と歯ぐきが傷を治し、新しい組織を作り、インプラントとしっかり結合する。この治癒が起こって初めて、インプラントは使えるようになります。
以前、PRGFを使った再生療法の話で「ご自身の治る力を引き出す」と書きました。その治る力の材料になるのが、毎日の食事からとる栄養です。
やせすぎも、治りには不利になります
栄養状態の目安の一つにBMIがあります。18.5未満が低体重、18.5〜24.9が標準、25以上が肥満です。
肥満は糖尿病や慢性的な炎症のリスクになりますが、反対にやせすぎも、インプラントにとって有利とは言えません。BMIが低い方は、エネルギーやタンパク質、ビタミン、ミネラルが足りていないことがあり、傷の治りが遅い、骨ができにくい、感染に弱いといった状態につながりやすくなります。体質的に細くても栄養が足りている方はいるので、BMIだけで判断することはしません。
極端なダイエットにも注意が必要です。カロリーだけでなく、タンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンD、カルシウムも不足しやすくなります。手術後は、体が骨と歯ぐきを作り直すために多くの栄養を必要とする時期です。治癒の期間中は、無理なダイエットは控えていただくようお願いしています。
骨はカルシウムだけでは作れません
骨にはカルシウム、というのはよく知られた話です。ただ、骨はコラーゲンというタンパク質の骨組みに、カルシウムが沈着してできています。タンパク質が足りなければ、カルシウムだけとっても丈夫な骨にはなりません。
肉や魚には、良質なタンパク質や鉄、亜鉛、ビタミンB12がそろっています。肉や魚が苦手でも、卵、乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品から十分にタンパク質がとれていれば心配はいりません。料理好きの私から見ても、卵と豆腐があれば、タンパク質のとれる献立はいくらでも組み立てられます。
ビタミンDも見逃せない栄養素です。カルシウムの吸収を助け、骨を作るのを促し、免疫の働きも整えます。近年は、ビタミンDの不足が骨とインプラントの結合や、インプラント周囲炎に影響する可能性も報告されています。
栄養不足は、高齢の方だけの問題ではありません
栄養不足というと高齢の方を思い浮かべがちですが、若い女性のダイエット、朝食を抜く生活、偏った食事、極端な糖質制限でも起こるものです。見た目は健康そうでも、治るために必要な栄養が体の中で足りていないことがあります。
当院では問診で食生活や体重の変化を確認し、必要に応じて食事のアドバイスをするようにしています。食事の内容から必要と判断した場合には、総合栄養サプリメントをご提案することもあるほどです。サプリメントはあくまで食事を補うものです。それでも、治りに必要な栄養素を補う手段として役に立つ場面はあります。
口の中だけを見ていては、インプラントを長持ちさせることはできません。10年後、20年後も噛み続けられるように、体の側の準備も一緒に整えていくことが必要です。
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