こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。
冷凍庫から出したばかりのアイスより、少し溶けかけたアイスのほうが甘く感じる。気のせいのようですが、これにはきちんと理由があります。
私たちが感じる味は、舌だけでは決まりません。温度や音、食べる前の予想まで含めて、脳がまとめて判断しています。そのため、同じ食べ物でも条件が変わるだけで感じ方が変わります。これが味覚の錯覚です。香りの話は「味」は舌だけではないでふれたので、今回はそれ以外の錯覚を集めてみました。
酸っぱいレモンが甘くなる果実
味覚の錯覚でいちばん分かりやすいのが、ミラクルフルーツです。西アフリカ原産の小さな赤い実で、これを食べたあとにレモンをかじると、砂糖をかけたように甘く感じます。
種明かしをすると、実に含まれるミラクリンというタンパク質が、舌の甘味の受容体にくっつきます。そこへ酸っぱいものが入ってくると、その受容体が働き出す。レモンが甘くなったのではなく、脳に届く信号のほうが書き換わっているわけです。
温度で甘さは変わる
溶けかけのアイスが甘いのは、甘味を感じる受容体が、温度が上がるほどよく働くからです。一般に、甘味は温かいほど感じやすく、苦味は冷たいほど弱く感じます。うま味は30〜40℃くらいで感じやすいとされています。
冷蔵庫から出したばかりのトマトがさっぱりしているのも同じ理由です。冷えていると甘味は感じにくく、酸味は残るので、爽やかな印象になります。トマトの甘さを味わいたいなら、食べる20〜30分前に冷蔵庫から出しておくのがおすすめです。
ビールをよく冷やすのも理にかなっています。冷たいとホップの苦味が穏やかになり、炭酸の爽快感が前に出ます。一方で、香りを楽しむタイプのエールが少し高めの温度で出されるのは、冷やしすぎると香りまで閉じてしまうからです。
台所に立っていても、温度は味付けと同じくらい気にしています。冷めたステーキがおいしくないのは、脂が固まって香りが立たなくなるからで、あとから塩を足しても取り戻せません。
音も味の一部です
ポテトチップスは、噛んだときの音が大きいほど新鮮でおいしいと感じられることが知られています。パリッ、サクッという音も、脳にとっては味の情報です。
高い音の音楽を聴きながら食べると甘味を、低い音では苦味を強く感じるという研究もあります。耳で食べている、と言うと大げさですが、まったくの間違いでもなさそうです。
錯覚は、脳の近道
錯覚と聞くと、騙されているような気がするかもしれません。けれども、どれも脳が食べ物を素早く判断するための仕組みです。料理をする側からすれば、温度も音も、腕の見せどころになります。
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