こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。
同じ料理なのに、器を変えるだけでおいしく感じた。そんな経験はありませんか。
私たちが感じるおいしさは、舌だけで決まっているわけではありません。脳は食べる前から、目で見た情報をもとに味を予測しています。
脳は、食べる前から味見をしている
料理が目の前に運ばれてくると、私たちは無意識に色、盛り付け、ツヤ、焼き色、湯気、器のデザインを見ているそうです。
そこから脳は瞬時に「甘そう」「香ばしそう」「濃厚そう」「熱そう」と味を予測しています。口へ運ぶ前に、頭の中では味見が始まっているわけです。
赤いアイスは「いちご味」だと思ってしまう
真っ赤なアイスクリームを見ると、多くの人はいちごやラズベリー、チェリーといった甘酸っぱい味を想像します。子どもの頃から「赤いアイスはベリー系」という経験を積み重ねてきたからです。
では、その赤色がトマトや赤パプリカ由来で、味も野菜に近かったらどうでしょう。舌が感じる味そのものは悪くなくても、多くの人は「何か違う」と感じます。料理がおいしくないのではなく、脳の予測と実際の味が一致しなかったために起こる違和感です。
脳は見た目と香りと過去の経験を組み合わせて味を予測し、予測どおりなら「おいしい」、少し違えば「違和感」、大きく違えば「まずい」と判断します。味覚は舌だけの感覚ではなく、脳の予測システムでもあるということです。
白ワインを赤く染めた実験
有名な実験があります。白ワインに赤い着色料を加えただけで、多くのワイン専門家が「ベリーの香りがある」「渋みが心地よい」と、赤ワイン特有の言葉で評価しました。中身は白ワインのままです。
訓練を積んだ人でもこうなるのですから、視覚が味の解釈に与える影響の大きさが分かります。
盛り付けも「味付け」のうち
料理人が器や盛り付けにこだわるのは、単なる演出ではありません。白い皿では甘味を感じやすく、黒い皿では高級感やコクを感じやすい。木の器では温かみを感じやすい。そうした傾向が報告されています。
同じ材料、同じ味付けでも、美しく盛り付けたほうが満足度は高くなるそうです。私も休日に料理をするとき、最後に器を選ぶ時間が一番迷います。まな板ごと出したほうがうまそうに見える日もあれば、白い皿にきちんと盛ったほうがいい日もある。あれも味付けの続きなのだと思っています。
おいしさは、五感の合計です
料理のおいしさは、味覚、嗅覚、視覚、音、そして温度や食感を脳が統合して生まれます。サクサクという音も、ジュージューという音も、その一部です。
一流の料理人が焼き色や盛り付け、器、照明、出すタイミングまで気を配るのは、これらすべてがおいしさを作っているからです。人は舌で食べているのではなく、脳で味わっている。そう考えると、料理の見た目にこだわる理由がはっきりします。
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