こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。
コーヒー、わさび、納豆、ブルーチーズ、山菜。子どもの頃は苦手だったのに、大人になって好きになった食べ物はありませんか。
舌が変わったように思えますが、実際には脳が味を学習した結果だと考えられています。辛いものが平気になる理由を書いたときにも、神経と脳が刺激に慣れていく話をしました。好き嫌いにも、似たような学習が関わっているようです。
脳には「味のライブラリー」がある
食べ物を口に入れると、味、香り、食感、温度、見た目といった情報が脳へ届きます。脳はそれをこれまでの食経験と照らし合わせて、「安全な食べ物だ」「好きな味だ」「前に食べたあれに似ている」と判断しています。
脳の中にあるのは、今まで食べてきた料理や味の記憶をためた、ライブラリーのようなものです。新しい味に出会ったとき、脳はこのライブラリーを基準にして、その味を理解しようとします。
苦味やクセは、学んで好きになる味
赤ちゃんは生まれたときから甘味を好み、強い苦味を嫌います。甘味はエネルギー源、苦味は毒のサインなので、本能としては正しい反応です。
コーヒーやビール、山菜、発酵食品、スパイスは、多くの人が最初からおいしいと感じるわけではありません。何度か口にするうちに、「この苦味がコーヒーらしさだ」「この香りがあるからカレーはおいしい」と脳が覚えていきます。おいしさには、生まれつき備わっている部分と、経験で育つ部分の両方があるということです。
経験が増えるほど、味の違いに気付ける
いろいろな食材や料理を経験するほど、ライブラリーは豊かになります。出汁の違い、香辛料の違い、微妙な塩加減。比べる材料が増えるので、細かな違いに気付きやすくなります。
逆に、食べるものが限られていると、新しい味を受け入れにくくなることがあります。味覚が鈍いというより、比べる経験が少ない状態と考えたほうが正確です。
料理をしていて面白いのはここで、自分の中のライブラリーが増えるほど、作れる味の幅も広がっていく。これは台所に立っていていちばん実感するところです。
食育は、味覚を育てること
食育というと、栄養バランスやマナーの話を思い浮かべる方が多いと思います。けれども本来は、いろいろな味を経験して、豊かな味覚を育てるという役割もあります。
和食、洋食、中華、発酵食品、野菜、魚介、香辛料。小さい頃からさまざまな食材に触れることで、ライブラリーは少しずつ充実していきます。無理に食べさせる必要はありません。一口だけ試してみる、という経験の積み重ねで十分です。
大人になってからでも、ライブラリーは増やせます。今日の食卓で、まだ食べたことのない一品に手を伸ばしてみてください。
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