こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。

先日、インプラントのご相談にいらした患者さまから、こんな質問をいただきました。

「最新の機械があれば、誰が手術しても同じ結果になるんですか?」

もっともな疑問だと思います。CTや口腔内スキャナー、当院で導入しているX-Guide®のようなナビゲーションシステムなど、インプラント治療を支援する技術は近年めざましく進歩しました。機械がここまでやってくれるなら術者は誰でも同じ、そう思うのも当然です。

しかし、実際は同じになりません。どれほど優れた設備があっても、それをどう使い、その場でどんな判断を下すかで治療結果は大きく変わるからです。だから当院では、インプラント治療の診断・治療計画から手術、術後管理まで、すべて私が責任を持って担当しています

「同じ症例」は、ひとつもありません

骨の量、硬さ、幅や形。神経や上顎洞までの距離。歯肉の厚み、噛み合わせ、残っている歯の状態、歯ぎしりや食いしばりの癖、持病やお薬、喫煙歴、そして見た目へのご希望。挙げればきりがありませんが、これらの条件がすべて同じ患者さまには、30年以上診療を続けてきて一人も出会ったことがありません。

レントゲン上は同じように「奥歯を1本失った方」でも、手術の難易度はまったく違います。マニュアル通りに進められるインプラント手術は、実際にはありません。

CTで分かるのは「形」までです

術前にはCTを撮影し、骨や神経の位置を三次元的に確認します。これで大半のことが分かると思われがちですが、CTから読み取れるのはあくまで「形」です。

実際にドリルを進めると、思った以上に骨が硬い。逆に、拍子抜けするほど柔らかい。出血の具合が想定と違う。骨造成に切り替えたほうがよい。手術をして初めて分かることが数多くあります。

その場で状況を正確に読み取り、安全な方向へ計画を修正していく。ここだけは、画像診断がどれだけ進歩しても機械が代わってはくれません。経験で培うしかない部分です

X-Guide®は「カーナビ」であって、自動運転ではありません

当院のX-Guide®は、手術中にドリルやインプラントの位置をリアルタイムで三次元表示してくれる優れたシステムです。計画した位置・深さ・角度を高い精度で再現できます。

ただ、これは手術を自動でやってくれるロボットではありません。画面の情報をどう読み、どう判断するかは、すべて術者に委ねられています。ナビゲーションは地図であって、運転しているのは歯科医師。カーナビがあっても安全に目的地へ着けるかどうかはドライバー次第、というのと同じです。

本当の成功は、10年後、20年後に決まります

インプラントは、埋入できたらゴールというものでもありません。骨としっかり結合し、歯肉と調和し、噛み合わせが安定し、ご自身で清掃しやすく、将来のメンテナンスにも対応できる。そこまで揃って、10年後、20年後も自分の歯のように噛めていることが本当の成功だと私は考えています。

ですから治療計画は、最終的な被せ物の形や力のかかり方から逆算して立てるのが私のやり方です。埋入位置だけを考えた計画とは、出来上がりがまるで違ってきます。

経験とは、「止める判断」ができる力です

経験豊富と聞くと、手術件数の多さを想像されるかもしれません。件数も大切ですが、それだけではありません。

起こり得るリスクを事前に予測し、トラブルの芽を摘んでおく。予想外の場面でも慌てず対応する。必要なら「今日はここで止める」「予定を変更する」と決断する。インプラント手術では、予定どおりに終えることよりも、安全を最優先に判断を変えられることのほうが大切な場面があります。

それができるかどうかが、経験の価値だと考えています。

最後に

医療は日々進歩します。AIやデジタル技術はこれからも次々と登場するでしょうし、当院も良い道具は積極的に取り入れていくつもりです。

それでも、道具はあくまで道具にすぎません。得られた情報を患者さま一人ひとりにとって最善の治療へ結びつけるのは、術者の目と手、そして判断です。

「最新設備があるから安心」ではなく、最新設備を使いこなす経験があるから安心していただける。そういう医院でありたいと考えています。