こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。

インプラント治療を行う際、「どのメーカーのインプラントを使っているのか?」が気になる方が多いと思います。

インプラント本体(人工歯根)はもちろん重要です。ただ、長持ちするインプラント治療を考えるなら、それと同じくらい大事なのに見落とされがちな部品があります。インプラントと人工の歯をつなぐ「アバットメント」です。

この部分の設計と使い方が、10年後、20年後の骨と歯ぐきの状態を左右します。

アバットメントは、骨を守る部品です

アバットメントは、インプラント体と人工歯をつなぐ土台の役割をする部品です。ボーンレベルインプラントでは、インプラントとアバットメントの接続部が骨のすぐ近くに位置します。ここで炎症や細菌の侵入が起こると、周囲の骨が少しずつ吸収される原因になることがあります。

つまりアバットメントは、単なる連結部品ではなく、骨を守るための部品でもあるという事です。

骨を守る設計①「プラットフォームシフト」

現在、世界の主要なインプラントメーカーの多くが採用しているのが、プラットフォームシフトという設計です。インプラント本体より少し細いアバットメントを接続することで、接合部を骨から遠い中心側へ移動させる構造で、次のようなメリットが報告されています。

  • 骨の近くで起こる炎症の影響を減らせる
  • 骨吸収を抑えやすい
  • 歯ぐきの厚みを維持しやすい
  • ブラックトライアングル(歯ぐきのすき間)ができにくく、見た目が自然に仕上がる

今では、ボーンレベルインプラントの標準的な設計思想になっています。

骨を守る設計②「ワンタイム・ワンアバットメント」

もう一つ重要なのが、One Abutment One Time(ワンタイム・ワンアバットメント)という考え方です。

以前は、治癒の確認、型取り、仮歯、最終的な被せ物と、治療の節目ごとにアバットメントを何度も着け外ししていました。ところがこの脱着を繰り返すと、歯ぐきの付着が傷つき、結合組織が壊れ、細菌が侵入しやすくなって、骨吸収につながることが分かってきました。

そこで現在は、最初に装着したアバットメントをできるだけ最後まで外さずに治療を進める方法が推奨されるケースが増えています。

費用は「部品代」ではなく、骨と歯ぐきを守る投資です

患者さまお一人おひとりに合わせたカスタムアバットメントには、CAD/CAMによる精密な設計と製作工程が必要になるため、治療費は多少高くなることがあります。

ただ、目先の費用だけを考えてこの部分を簡略化すると、数年後に骨吸収や被せ物のトラブルが起こり、結果的に再治療につながりかねません。長期間、骨と歯ぐきを守るための投資だと考えていただきたい部分です。

良いインプラントは「見えない部分」で決まります

患者さまが目にするのは、美しく完成した人工の歯です。ただ、その歯が何年持つかは、下に隠れた設計で決まります。どれほど優れたインプラント本体を使っても、アバットメントや補綴の設計が不十分なら、本来の性能は発揮されません。

料理と同じで、最高級の食材だけでは最高の一皿になりません。食材の特性を理解した調理法と丁寧な仕上げがあって、初めて一皿の価値が生まれます。

当院では、プラットフォームシフト、ワンタイム・ワンアバットメント、精密なカスタムアバットメント、スクリュー固定式の補綴を組み合わせて、骨と歯ぐきへの負担をできる限り減らしています。良いインプラント、良い設計、良い材料。この三つがそろって初めて、10年後、20年後も安心して噛み続けられる治療になると考えています。

※画像はノーベルバイオケア社より転用転載/無断転載厳禁