こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。
私は「インプラントを埋める歯科医師」ではありません。10年後、20年後の口腔機能を設計する歯科医師でありたい。
開業から30年以上、そう考えて診療を続けてきました。
今日は、私がインプラント治療にどう向き合っているか、少し長くなりますがお話しします。
手術の成否は「今日」では決まらない
インプラント治療は、人工歯根をあごの骨に埋入する外科手術です。手術そのものは数十分から数時間で終わります。ですが、患者さまはそのインプラントと何十年も付き合っていくことになります。
当院では1987年にITI(現ストローマン社)のインプラントを導入して以来、長期にわたり経過を見てきました。
現在確認できる最長の患者さまは、埋入から30年が経過しています。
それだけの年月を見てきたからこそ言えるのは、インプラントの本当の評価は手術の日には下せない、ということです。
だから私が考えるべきことは、「今日うまく埋入できたか」ではありません。
10年後も、20年後も、自分の歯のように噛めるか。
将来も快適にメインテナンスを続けられるか。
周囲の天然歯や歯周組織を守れる設計になっているか。
そこまで見据えて初めて、価値のあるインプラント治療になると考えています。
治療計画は「どこに埋めるか」から始めない
私の治療計画は、「インプラントをどこへ埋めるか」から始まりません。まず考えるのは、「この患者さまにとって理想的な口腔機能とは何か」というゴールです。
そこから逆算して、一つひとつ検討していきます。
- 残せる歯は本当に残すべきか
- 抜歯のタイミングは適切か
- 骨造成は必要か、それとも避けるべきか
- インプラントの本数は適切か
- 埋入位置・深さ・角度はどうあるべきか
- 最終補綴物はどのような形態が最も機能的か
- 清掃しやすい構造になっているか
- 将来、修理や再治療が必要になっても対応しやすいか
- 咬合力をどう分散させるか
項目だけ見ると多く感じるかもしれません。ですが、どれか一つでも欠けると、他がどれだけ良くても結果は損なわれます。私の持論は「臨床は全科目の掛け算」です。歯周病、補綴、咬合、外科――どれか一つが0点なら、掛け算の答えは0点になってしまいます。インプラントの治療計画も同じで、一つひとつを積み上げながら、その患者さまだけの設計をしていきます。
デジタル技術は「設計図」を描いてはくれない
近年、CTや口腔内スキャナー、X-Guide®など、デジタル技術は飛躍的に進歩しました。当院でもこれらを積極的に使っています。X-Guide®を使えば、計画した位置・深さ・角度をリアルタイムで確認しながら埋入できます。
ただし、これらは設計図を正確に実現するための道具です。設計図そのものを描くことはできません。
どこに、なぜ、その位置にインプラントを埋入するのか。どのような噛み合わせをつくり、どのような歯肉の形態を目指すのか。それを決めるのは機械ではなく、術者の知識と経験、そして責任です。道具が進歩するほど、設計する側の力が問われる。30年以上この治療を続けてきて、その思いはむしろ強くなっています。今でも国内外のセミナーや講演会に足を運び、学び続けているのはそのためです。
料理と同じ、完成形から逆算する
個人的な話になりますが、私は料理が趣味で休日は必ずと言っていいほどなにかしら作っています。
料理は、完成した一皿を最初に思い描いてから作ります。「どんな料理を出したいか」を決め、そこから逆算して食材を選び、火加減や調理の順番を組み立てる。
行き当たりばったりで食材を切り始めても、まとまった一皿にはなりません。
インプラント治療も同じです。最初に完成形を描かなければ、途中の工程に一貫性は生まれません。
私は「今日の手術を成功させること」ではなく、「20年後も患者さまが笑顔で食事を楽しめること」をゴールに、診査・診断・治療計画・手術・補綴・メインテナンスまでを一つの流れとして考えています。
私の基本理念
インプラント治療は、人工歯根を埋めて終わる医療ではなく、患者さまの人生に寄り添い、その先の未来まで見据えて口腔機能を設計する医療だと考えています。
それが、開業以来変わらない、私がインプラント治療に向き合う基本理念です。
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