こんにちは。嶋野歯科医院、院長の嶋野です。
カレーを作っていて「少し塩が足りない」と思い、ひとつまみずつ足していったら、でき上がりは塩辛かった。そんな経験はありませんか。
腕が悪いわけではありません。人間の味覚には、同じ刺激を受け続けると感じにくくなる性質があります。味覚疲労、あるいは感覚順応と呼ばれる現象です。
舌ではなく、脳が慣れている
何度も同じ味を確かめているうちに、塩味や香辛料の刺激に慣れて、最初ほど強く感じなくなります。その状態でさらに塩を足せば、完成した料理は塩辛くなります。
舌が鈍くなったというより、脳が同じ刺激に慣れた状態です。香水を付けた直後は強く香るのに、しばらくすると自分では気にならなくなるのと同じ仕組みです。
味見は、変化を確かめる作業
料理人が何度も味見をするのは、同じ味を確認するためではありません。塩をひとつまみ加えた、ワインを煮詰めた、バターを入れた、レモンを搾った。工程ごとに味は少しずつ変わります。味見は、その変化が狙いどおりかどうかを確かめる作業です。
私も台所では何度も味見をします。ただ、感覚だけに頼ると今お話しした落とし穴があるので、ラムラックを焼いた記事でも書いたように、肉を焼くときは中心温度計を使います。数字で確かめられるところは数字に任せて、舌は味の判断に取っておく。それが私のやり方です。
一流の料理人は、リセットの仕方を知っている
味覚が疲れてきたら、水を飲む、無塩のクラッカーを食べる、少し時間を空ける。口に残った味を流して、次の一口を正確に判断するための工夫です。
これは料理人だけの話ではありません。ソムリエは一日に何十種類ものワインを評価しますし、コーヒーの品質を判定するカッパーは何十杯ものコーヒーを飲み比べます。味覚疲労を考えずに続ければ、後半ほど評価が狂っていくでしょう。だから評価の順番を工夫し、途中で口をリセットするのが決まりごとになっています。ワインのテイスティングの場に水や無塩のクラッカーが置いてあるのは、そのためです。
家庭の台所でも使えるコツ
冒頭のカレーのように、家庭料理でも味覚疲労はよく起こります。味が決まらなくなってきたら、一度キッチンを離れて数分休むか、水を一杯飲んでから味見をしてみてください。
それだけで、さっきまで足りないと思っていた塩が、もう十分だったと気付くこともあります。
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